井津井 康浩先生からのメッセージ

総合教育研修センター

井津井 康浩

田中雄二郎先生、このたびは退任を迎えられまして、誠におめでとうございます。旧第二内科入局以来22年間が経過し、そのうち8年間も田中先生の下でご指導を賜れたことを深謝申し上げます。退任記念誌も寄稿の機会を賜りましたので、述べさせていただきます。

平成18年度に総合診療部医員としてお世話になった後、大学消化器内科へ戻り、研究や臨床を行っておりましたが、平成21年度から草加市立病院消化器内科へ派遣となりました。草加に根付き消化器の臨床を邁進していこうと過ごしていたところ、田中先生からお電話があり、大学で教育の仕事のお誘いを受けました。総合診療部在籍時に大川淳先生や山脇正永先生のご苦労を間近で見ており、果たして自分に務まるのかという不安と、消化器内科医として培った多くの技能を捨てる覚悟も必要とあり大変迷いました。土浦協同病院在籍時に大林日出雄先生から、田中先生は厳しさと優しさを両方持つ先生だから一緒に働くことを勧めるよと言われたことを思い出し、大学教員になることは光栄であると考え、平成25年度より臨床教育研修センターの教員として大学へ戻りました。

私の業務は本学研修医119名の半分の管理が担当でありました。その他には医学科臨床実習での地域医療実習の統括を始め、卒前・卒後の様々な業務を担当することになりました。いざ始めてみると、医員時とは比べものにならないほどの仕事量があり、しかも一から覚えることばかりでしたので、戸惑いや低い自己効力感に辟易する日が多くありましたが、業務を遂行する責任と成長するチャンスを与えていただいたと前向きに考え、田中先生を始め教育関連の先生方、秘書さん、研修センターや医学教務係などの事務員さんに助けてもらいながら今日までどうにか過ごしてきたのが現状です。

卒前・卒後教育の仕事を通じて学んだことが主に3つあります。1つめは人の行動にはその人なりの理由があるということ、2つめは学生や研修医を第一にして教育を考えること、3つめは組織の中でのリーダーシップとフォロワーシップです。1つめや2つめのことは至極当然のことですが、研修医のサポートをするときに実感することがあります。例えば、態度が悪いと診療科から指摘を受けた研修医がいたとします。どうしても診療科の意見を汲んでしまい、研修医が悪いという先入観から入りがちです。研修医から話を直接聞くと、悩みや体調不良があったりして、取った行動には背景や理由があり研修医ばかりに非があるわけではないことがわかりました。教育や管理の仕事を通じて、人の立場になって考える姿勢を身につけました。教育の仕事に携わり失ったことがありますが、人間として成長できたのが何よりの収穫です。

その他にも田中先生から学ぶことが多くあり、今の自分につながっています。武道に守破離があるように、いつになったら田中先生から『破』と『離』ができるものかと考えることがありますが、いつかは離れる時がきます。田中先生からご指導いただいたことを糧にして、自分にしかできないことを生かし、自分の進むべき道を進んでいきたいと思います。

最後になりますが、退任後もどうかお元気でお過ごしくださいますようお祈り申し上げます。出来が悪く教養の無い私を、そばに置いていただき、今日まで我慢強くご指導いただき誠にありがとうございました。