木下 淳博先生からのメッセージ

東京医科歯科大学 統合教育機構 事業推進部門 教授

木下 淳博

予備の予備の心得

田中雄二郎先生と最初にお会いしたのは、2004年頃、医学部・歯学部でeラーニングをどのように導入していくかを検討する打合せだったと思います。医学部から田中先生と大川先生が、歯学部から大谷先生と私が参加し、そもそもeラーニングとは何なのかがイメージできていない段階から、手探りで導入を進めてまいりました。その後は、全学のeラーニングシステムとして、何をどのように導入していこうか、著作権処理をどうすべきかなどについて、共に検討させていただいておりました。

その中で、一つ忘れられない出来事があります。2005年に行われた、特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)に申請した際の審査会でのことです、当時の鈴木学長、田中先生と共に、20名以上いたと思われる審査員の前でプレゼンテーションをする予定でした。プレゼンテーションは当時愛用していた私のレッツノートで行う予定でしたが、会場に入ってプロジェクタに接続した際、なぜかプロジェクタに画像を投影できなかったのです。GPの審査会は時間厳守で、年によっては、「申請者が審査室に入る際の、入口のドアノブが回った瞬間から時間を測定し、○○分経過後にプレゼンテーションを打ち切ります」のような注意書きがあったほど、時間には厳しいものでした。落ち着いていれば何とかなったのかもしれませんが、すでに時間測定は始まっており、当時の鈴木学長がマイクをもって発表者の紹介を始めようとしています。ところがスクリーンも、私の顔も真っ青。そのとき、横にいた田中先生は瞬時に状況を判断し、念のために起動してパワーポイントの開始画面まで出してくださっていた、ご自身のレッツノートを落ち着いて差し出してくださり、「これに繋ぎ換えれば?」 そうでした! 審査会場までの車の中で、念のためということで、最終版のプレゼンファイルをUSBメモリにコピーし、田中先生のPCにも保存してあったのです。すぐにPCを田中先生のレッツノートに繋ぎ換え、プロジェクタに1枚目の画像が出た瞬間に、「では、木下よりご説明いたします」と、鈴木学長の紹介が終わり、私の番が回ってきたのです。田中先生が予備ファイルを起動してくださってなかったらどうなっていたかと思うと、背筋が寒くなります。プレゼン用PCとは別に、プレゼンに合わせていつでも交換できるようにパワーポイントを起動してご自身のPCを用意し、支援してくださった田中先生に、心から感謝申し上げたいと思います。この教訓以降、同僚や後輩に何と言われようとも、できる限り「予備」を、さらには「予備の予備」を準備するようにしています。

これはほんの一例です。特色GP以降、ICT活用教育や医療情報系の取り組みにおいて、様々な場面で私に活動の機会をお与えくださいました田中雄二郎先生に改めて感謝申し上げますと共に、益々のご活躍をお祈り申し上げます。