卒業生からのメッセージ

田中先生

ご無沙汰しております。
医学科に入学し、卒業することなく退学いたしました。覚えておいででしょうか。
5年生の3月から休学し、その夏に「他大学の編入試験を受けるため」と退学届を実家から郵送したところお呼び出しがかかり、実際に退学する段には田中先生ともお話しする機会をいただいたと記憶しています。
その時に、「こういう理由での退学だから、もし、大学を出た後何年かして戻ってきたいと思ったら、一年で卒業とはいかないけど、そういう道も用意できることを覚えておいて」と仰っていただいたことが胸に残っています。
実際に何度か、復学を打診してみようかな、と、田中先生宛にメールをしようとしたことがあります。
5年生まで公費のかかった医学教育を受けた上でそれをまるっきり放棄したことの罪悪感や、何もあのとき辞めなくてもよかったじゃないかという思いは折に触れて湧いてくることがありました。
しかし、現実には、この歳・子持ちの状態で医学生になり、またその先医師として働いていくという覚悟を決めることはできず、書きかけたメールを送ることはありませんでした。
今の私は、外資系アパレル企業で人事の仕事をしています。現職についたのは今年の1月ですが、この業界・職種で働きはじめてからは5年がたちました。
人間というのはほんとうに面白いものだな、と、この仕事をしていると感じます。医師になることを放棄した身で言うのは僭越ですが、人間への興味、という要素は共通しているように思います。
あのときかけていただいたお言葉は、ずっと確かに私の中で生きています。医療界に貢献することは残念ながらできずじまいですが、人生を歩いて行く上での灯りとさせていただいています。
本当に、お世話になりました。ありがとうございます。