増田 孝広先生からのメッセージ

増田 孝広

現在の所属 東京医科歯科大学 集中治療部
専門 集中治療医学・麻酔科学
卒業年次 医56・H20年・2008年

平成 14 年に入学した私たちは、田中先生が教育委員長として形にされたものの多くを、「はじめて」経験した学年でした。プロジェクトセメスター(当時は、フリーセメスターと呼ばれていました)、ブロック制の講義やPBL、クリニカル・クラークシップ……私たちは、ある意味では田中先生の試作品であったのかもしれません。

ですが、卒業から十年余り過ぎた今、教員として、かつて自分が通った道を歩んでいる後輩諸君の顔を見ていると、「私がその 1 期生のひとりである」ということが不思議と誇らしくも感じられて、あの頃、新しいことを始めようとする活力に満ちた田中先生と、先生の試作品として歩んだ日々は、得難いものであったのだと実感しています。

私にとって、田中先生は教育委員長でしたし、教育者としての姿が強く印象にあって、また、節目ごとに教壇に立ち、私たちに語りかけてくださっていたことから、私たちにとって距離の近い、いわば「担任の先生」に近いイメージでしたが、そんな私が先生の見方が変わった出来事をひとつ思い出しました。

私が中野総合病院の消化器内科へ実習で 1 週間出かける機会があったのですが、中野総合病院で当時の消化器内科の部長をお勤めであった入江徹也先生に、「かわいい後輩の雄ちゃん」のエピソードをご紹介いただきました。かつて、尿管結石の痛みに苦しんでいらした田中先生が、入江先生の、「もっと強い痛みを感じたら痛みが緩和するのではないか」と言うアイデアに、蒸留水を皮下注射して、いよいよ激痛でのたうち回った……田中先生にもかつて、そうエピソードがあったのかと、それを知った私が、(一方的ですが)より親近感を感じたことを覚えています。

田中先生は、私たちの開催する飲み会にも、足しげくお運びくださいました。ブロック講義のプロトタイプとして、消化器ブロックが 1 ヵ月間開催された際、私たちの講義を担当いただいた先生方を全員お招きして、盛大に打ち上げをさせていただいたことがあります。この際も、もちろん田中先生にお越しいただきました。会は殊の外盛り上がり、「これからも、どんどん教員を狙い撃ちして飲み会を開催してください。」と、メールでありがたいお褒めのお言葉もいただきました。その節はごちそうさまでした。

私個人の思い出ですが、7 年ぶりに医科歯科に戻り、集中治療部で仕事をはじめてからも、何かと田中先生には気にかけていただき、エレベーターで出会った折には、集中治療のあり方についても短い時間で議論させていただくこともありました。また、集中治療部での臨床でも田中先生と症例についてディスカッションさせていただいたことは私にとっても貴重な経験でした。

先生が退官されてしまうというのがいまだに今ひとつピンときませんが、これからも、折に触れて集中治療のあり方について、お話できればと思います。

さて、先生が私たちに注いでくださった情熱を、私からも後輩に少しでも伝えて行きたいと思い、口調を真似しているうちに、近頃では少し先生のモノマネに取り組んでいます。いつの日か、先生にお披露目する日が来るかもしれません。その日までどうか変わらずお元気で、エネルギッシュにご活躍を続けられますよう、心よりお祈り申し上げます。

ありがとうございました。