見神 尊修先生からのメッセージ

見神 尊修

現在の所属 東京医科歯科大学脳神経病態学分野/Mount Sinai Beth Israel/Tufts Medical Center 
専門 神経内科
卒業年次 医65・H29年・2017年

この度田中雄二郎先生がご退任されると伺い、教育を受けた一学生から見た田中先生の人となりを綴らせて頂ければと思います。なお田中先生は学生からの人気もありましたが、田中先生ほど学生間で下の名前で呼ばれていた先生もいないと思います。

私が初めて田中先生にお会いしたのは入学試験の面接の時でした。私は中高ではハンドボールしかしていなかったため、「脚力」には自信があったものの「学力」はそれほどなく、受験生としての売りはありませんでした。しかし、面接の中で田中先生に「部活をやりながらどう勉強しているのか」という質問を頂き、毎日9時から必ず1時間勉強していると申し上げると、それを先生方に評価して頂いた印象がありました。振り返るとこの質問の御蔭様で幸い医科歯科に拾われたのだと思いますが、それまで勉強をほとんどしてこなかった後悔と合せ、この大学在学中は確と学問を修めようと決めました。

斯くして医科歯科に入学こそしたものの、私も典型的な医学部生の例に漏れず「自分が将来何をしたいか分からない」という状態に陥りました。自分が将来どんな医師になりたいのか、それ以前に医師になりたいのか、などといった取り留めのない漠然とした将来に対する不安感を持ち続けていました。その中で、田中先生は学生に対してキャリア形成の授業を度々行って下さり、"『好き』より『得意』にこだわる ” などといったアドバイスが強く心に残った覚えがあります。その他にも、「君たちは病院のレストランのエビフライを食べたことがあるかい」とおっしゃり、当時自分では食べられない値段の(今でもそうかもしれませんが)エビフライをご馳走になりながら、「好奇心・洞察力・影響力・胆力・ストレス耐性」というリーダーシップの5つの心得についてお話を伺ったこともあり、この日書いたメモは今でも時折見返しています。

また毎年恒例のようですが、田中先生は医学部5年生の終わりに"自分のキャリアに関する、今後10年間の目標とそれを達成するための方法について”というお題のレポートを課されます。その中で私はキャリアに悩んでいることを率直に書くと、すぐに田中先生はご連絡を下さり、ご多忙にも関わらず一対一のお話の機会を設けて下さいました。ここでは、私が今まで学生として存じ上げなかった田中先生の面を教えて頂き、それまでの人生で迷いや反省が多々あったこと、仕事等で思い通りに行かなかったこと等を伺い驚いたのを強く覚えています。そして私の悩みを聞いて親身にかつ率直なご意見を下さり、自分も将来の田中先生のように学生や後輩にすぐに手を差し出せる医師・人間でありたい、と確と心に刻みました。

時が経つのは早く現在卒後3年目となりますが、奇しくも上記のレポートで宣言した道を辿っています。反省・後悔することも多々あり、常に前進できているわけではありませんが、『人との出会い』が自分を前へと進める駆動力となっており、その中で田中先生は大きな位置を占めています。これからも田中先生のご助言の通り、常に内省を踏まえて進むべき道を探し続けていこうと思います。今後も御指導御鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。

病院の尊敬する天野永一朗先生と。ともに田中先生の教え子です