渡辺 守先生からのメッセージ

東京医科歯科大   理事・副学長
高等研究院院長・特別栄誉教授

渡辺 守

これからが田中雄二郎先生の本当のご活躍の時代

田中雄二郎先生は私にとって、興味深く、不思議な存在である。

先生と初めてお会いしたのは、私が1999年7月に本学大学院消化器病態学分野の教授にと突然選ばれて、慶應大消化器内科で研究の最終整理をしていた赴任前の時である。お父上が高名な政治家であられた事から、興味深くお会いしたが、ごく普通の真面目そうな印象であった。この初感は後に大きく裏切られる事になる。

私が2000年4月に本学に赴任後、色々と「ご指導」戴いた。消化器内科ができる前の1年間、「白い巨塔型」の教授回診では、先生が誘導役として、いつも私の側におられた。

ところが、消化器内科ができた2001年4月に先生は突然、総合診療部教授として転出されてしまった。異動されてからの教育改革は先見性のある見事なものであり、今の本学に優秀な医学部学生が多く集まる基盤を作られた。その働きぶり、調整ぶりはさすが政治家のお子様であると初めて理解した。しかし、その改革の際にいつも消化器内科がトライアルの場となり、医局員が大変苦労した姿を良く覚えている。

その後、教育から病院改革に転身され、病院長として、今の本学医学部附属病院に研修医が日本一集まる病院の基盤を作られた。しかし、私と立場が逆転し、消化器内科には特に厳しい指導が入り、我慢を余儀なくされた。まさに政治家になられたと思った。

2014年に医療担当の理事・副学長になられ、更に病院改革を進められた。「雲の上の人で話もできませんよ」と冗談を言っていたのを覚えている。ところが、3年後の2017年に私もまさかの産学官連携・研究展開担当の理事・副学長になり、共に大学運営を推進することとなった。不思議な縁と思った。先生は深く考え着実に、私は新しい事だけを求めて、全く正反対のやり方で大学改革を進めているに違いない。先生はpoliticianではなく、お父上と同じstatesmanになったのだと気が付いた。

先生は定年退任後も本学の将来には欠かせない。大学改革、病院改革に邁進するに違いない。また新しい道を開拓するに違いない。これからが田中先生の本当のご活躍の時代であると確信している。

渡辺守理事・副学長の退任記念祝賀会でスピーチする田中雄二郎先生